- 2014-11-25 (火) 8:11
 - 神様
 
				つづき。
				
				「無礼者!!!そこで何をしておるっ!」
				
				凛とした声と勇敢にも女性一人で数名の男に立ち向かう姿、、、、(これはただの女性ではない・・・・・) 一瞬、ひるんだ五十猛様でしたが、声色は穏やかに笑顔を崩さず、こう話しかけました。
				
				「すまぬ。あまりにも美しい白いナマズがおったものでな、これは神の使いかと思い、一度挨拶をさせていただこうと思ったまで、悪気はござらぬ。・・・・・・して、ぬしは何者か?」
				
				「名を問う前によそ者のお前から名を明かせ。」
				
				「おぉ、これは失礼いたした。わしは北の大王、スサノオ神の子、五十猛と呼ばれている者じゃ。」
				
				
				
				その美しく整った眉には警戒の色を隠さないまま、その姫神はこう答えました。
				
				「あなたが北の地で猛威を振るっている軍神と呼ばれておる神の子、五十猛様でしたか。私はこの地の長、丹生の大王の娘、丹生津姫です。あなた方が今、追い回しておりますのは神の使いではなく、わたくし共の神そのものであります、遠い血につながる”豊玉”と呼ばれし祖母の祖母のまた祖母の化身。今すぐにその聖域から部下を離れさせなさい。」
				
				「・・・・・そうであったか。これは失礼した。」
				
				
				五十猛様は急いで部下を沼からあげ、お詫びとして残っていた食料をすべてそこに供え、泥だらけの地に膝をつき粗相を詫びてしばらくの間祈りを捧げました。
				
				しばらくの間、眺めていた丹生津姫様もようやくその険しい気を解き、静かに見守っておりましたが祈りが終わってゆっくりと五十猛様の一行に近づき、距離をおいて次の質問を発しました。
				
				
				「・・・・・して、北の大王の息子殿が何用でしょうか?聞くところによれば、あなたの父神様は欲しいものは何でも力づくて手に入れると聞く。あなた様たちもこの地の宝であります、みづかねを狙って攻め入ろうとされている欲の塊の者か?・・・・・・・みたところ、兵も少なく武器も持たず、おそらく物見の者らであろうか?・・・・・だとしたら残念じゃが、この地にはもうほとんどみづかねは残っておらぬ。そのまま引き返し、戻って北の大王にそう伝えよ。」
				
				
				「いや待て。そうではない。わしはあくまでも旅の者だ。この地の大王、丹生族の長に会いにきた。できれば姫神、そなたがわしを父神様のところへと案内してはくれぬか。」
				
				
				次にたじろいだのは姫神の方でした。
				
				無邪気に、しかし丁寧に守り神である白ナマズを泥だらけの姿で追っていた五十猛様の姿。みずからの非礼を認め、そのお詫びとしておそらく今からの大切な旅の食料であろうものをすべて捧げて膝を折って祈る姿。なによりも、今この姫神に向けられたまっすぐな目の光・・・・・・・・
				
				
				(・・・・この泥だらけの男神は、、、嘘をついてはおらぬ・・・・・)
				
				
				自分の直感でそう信じれた丹生津姫は、意を決して佇まいを直し、まだすべてを信じられぬ心とは裏腹に出た言葉は、
				
				
				「・・・・わかりました。わたくしに着いてきてください案内をいたしましょう。しかし、会うか会わぬかは王が決めることですので約束はできません。王は・・・・・・父は今、”気枯れ(病中、危篤に近い状態)” なのです・・・・・・・・・・・・・」
				
				
				踵をかえして歩き出す丹生津姫様の背に一礼し、五十猛様の一行は南の大王、丹生の長に会いにいくこととなりました。
				
				
				つづく。
				
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コメント:2
- いもこ 14-11-25 (火) 11:42
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連載を全部読み終わってからコメントしようと思っていたのですが、丹生津姫の登場場面でワクワクしまして思わず投稿しました(笑)!次回楽しみです。
関東の一部地域で杉山神社という名称の神社が多いのですが、殆んど五十猛命が祀られていました。神社の由来を知ると面白いですね。 - 北斗七星 14-11-26 (水) 21:47
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いやぁ、ホント、まるでご馳走をいただいているようなお話し。楽しすぎますぅ〜( ´ ▽ ` )ノ
 






