努力と天才の神のお話 ③

続き。

『阿衡事件（あこうじけん）』
仁和3年（887年）11月21日、藤原基経の推薦により臣籍から皇太子となった宇多天皇は、その即位に際して、基経を関白に任じる詔勅を出した。基経は先例により一旦辞退する。天皇は左大弁橘広相に命じて二度目の詔勅を出した。その詔勅に「宜しく阿衡の任をもって卿の任とせよ」との一文があった。阿衡は中国の殷代の賢臣伊尹が任じられた官であり、この故事を橘広相は引用したのである。これを文章博士藤原佐世が「阿衡は位貴くも、職掌なし」と基経に告げたことにより大問題となる。怒った基経は一切の政務を放棄してしまい、そのため国政が渋滞する事態に陥る。基経は厩の馬を全て市中に放って怒りを表したという。心痛した天皇は基経に丁重に了解を求めるが、確執は解けない。翌仁和4年（888年）4月、天皇は左大臣源融に命じて博士らに阿衡に職掌がないか研究させた。基経の威を恐れた博士らの見解は佐世と同じであった。広相はこれに反駁する。 6月、天皇は先の詔勅を取り消して、広相を罷免した。天皇は無念の思いを日記に記している。基経は執拗になおも広相を遠流に処すことを求める。広相に罪がないことを知る天皇は窮するが、讃岐守菅原道真がこれ以上は藤原氏の為にならない旨の書を基経に送り、基経が怒りをといたことにより、ようやく事件は収まった。この事件により基経は藤原氏の権力の強さを世に知らしめ、天皇が事実上の傀儡であったことを証明したのである。ーwikipediaよりー

・・・初っ端からウィキ丸パクリで申し訳ないです（苦笑）



「さすがは讃岐守菅原道真公、素晴らしき見識じゃ～！」

ちまたやちまたでは道真様の評判は上がるばかり。

しかしその本人が知らぬ所で歴史の歯車は静かに回りはじめました・・・・・。

「噂に聞く菅原道真か、、、なんとも頼もしい。して、どの様な人物か？」

当時の天皇、宇多天皇とは藤原基経（ふじわらのもとつね）の推挙・後押しがあり天皇となられた・・・・・・・言えば藤原基経様のあやつり人形的な、、、、と言えば失礼ですが、藤原家の権力の為に立てられた天皇と言っても差し支えないと思います。その為、常に藤原家の顔色を伺い、また天皇と言ってもいつ・どうなるか判らぬ身。常に自分の存在を守り、藤原の力に怯える日々でございました。

「はっ。菅原道真とは、、、、、かくかくじかじかの男とでして・・・・・それはもう、あれやこれやとすんごい力を秘めた者でございます。それよりも宇多天皇。今や藤原家の権力は天にも昇る勢い、天皇家の権威もすでに超えております・・・・・・天皇の地位もいつまで持つのやら、藤原の機嫌一つで明日の命さえ解らない身でございます。。。。。。」

「うむ。そうじゃの・・・・。せっかく天皇となりこの国一番の権威を本来持てた筈がはずか・・・・・情けなくも悲しい身じゃ・・・・・・・。」

「・・・宇多天皇。・・・・・・・・私に良い知恵がございます。」

「ん？なんじゃ？？申してみよ。」

「ごにょごにょ・・・・・・・・・・」

「・・・・・おおっ、それはグットアイディアじゃっ！！！ナイスッ、側近の者！」

人に厳しく己に厳しく。ただ純粋に文学を極めんと道をひた走る道真様の運命が変わりだしたのはこの頃からでございます。宇多天皇の寵愛を受け、学者としては最高の地位「文章博士」まで極めた方が、「政（まつりごと）」の世界に巻き込まれていきはじめてでしょうか。宇多天皇は藤原氏の台頭を恐れるあまり、家柄も良く努力の塊、また気まじめで生まれつきの才能が光る道真様に 『藤原家の押さえ』 として目をつけたのです。

これ以降、道真様は政界においてもその地位をどんどんと高める事になります。

若き時より昇り過ぎた龍、菅原道真様。

今や誰にもひけを取らないどころか、昇り過ぎて天界の人間。注意をする人もいなければたしなめる方もいなくなる。これは道真様の一番の不幸と言えば不幸、また時代の流れと言えばそれまででしょう。

「道真様。・・・・どうだ上からの眺めは？」

「・・・・これは島田様。嫌みな言い方は止めて下さい（苦笑）私は私の努力を天が認めてくれたのみ。道真は昔の道真のまま、何ら変わっておりませぬ。」

「そうじゃの・・・・・話は変わるが、孫は元気にしておるか？」

「はい。娘の衍子（えんし：菅原道真の子、島田忠臣の孫）はこの度、宇多天皇に嫁ぐことに決まりました。」

「な、なに？宇多天皇に？！・・・・そ、そうか。それは目出度い・・・・・話じゃの。しかしお主は遣唐使にも選ばれ、また廃止も唱えておるそうじゃの。世界に通じる広い見識を持った稀な男として、そして天皇の女御の義父になる立場にケチもつけようがない者に成長した・・・・・・・もうわしにとっては雲の上の人間だな。」

「そんな事はございません。師とは生涯通じての師でございます。娘の嫁入りも先方よりお話を頂いての事。遣唐使廃止も、お国は見栄と権威だけで続けようとされておりますが、唐の国は情勢が不安定で私が見た所大金を掛け今の唐に使を送る意味合いは薄いものです。私は何よりも美しい政（まつりごと）を望んでいるんです。」

「・・・・・・わしに政ごとは判らぬ。お前の信念を貫いて良い。しかしの、道真・・・・いや、道真様。これだけは覚えておいて貰いたい。人はの、水清くして魚住まず、また亢竜悔いありと申すもの。清く生きるのは構わぬ。上を目指すことは良いことじゃ。・・・しかしの・・・・・偉くなればなるほど、清くなればなるほど周りに寄り添う人間は息苦しくもなろうし、ぬしに意見も言いにくい、人は離れてもいこう。わしはぬしを初めて見た時より、なんと目の美しき青年かと驚いたものじゃ。なんと潔白で高潔な人間かと。そこに惚れてわしの最愛の娘も嫁がせた。しかしの・・・・・人は真っ黒でも真っ白でもいかぬ。この世を渡るにぬしの目は清すぎ、鋭すぎる・・・・・。その事をくれぐれも忘れんでくれよ。」

「島田様・・・・一つお尋ねしたき儀がございます・・・・・・・」

「・・・・ん？なんじゃ？？」

「では、、、、、では、なぜ”天”があるのでしょう？人の”正しき道”とは何なのでしょう？・・・・・私はこれでも、すべて天に委ね、決して天に人に対して、恥ずかしい道を歩んで来た事はございません。ただ真っすぐに人とはどうあるべきか、生きるとはどうあるべきかを考え、私欲を捨て己を磨きに磨いてきました。・・・・たしかに、人に冷たい男と蔑まれた事も幾度もございました。蔭口叩かれるのも慣れました。・・・・・が、わたしはただ正しく生きたいと、人の蔭口に関わらず、ただ純粋に学問を通し私自身を磨いてきただけのつもりでございます・・・・・・」

「うむ、、、その通りじゃの。ぬしは何も悪くはない。しかしの、わしはただの気まぐれな歌人じゃ。歌が好きで歌を詠み、ただ歌に生きた人間。そなたにもいずれ、今わしが申しておる日を理解する日も来るじゃろう。ははははは・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・。」

それから８９９年、ついに５９代宇多天皇は６０代 醍醐天皇の時代となり出家を決意されました。時を同じく８９９年は道真様が右大臣になられた年、ついに人として最高位に就かれました。

続く。

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