続き。
「ヒコよ、よく聞くが良い。わしが何故、血の一滴までやつらと戦おうとするのかを・・・」
静かに語りだした天津甕星様・・・・天ノ香々背男の大神様。
野山を埋め尽くす、遠巻きに巻いた武甕槌神・経津主軍(天津神軍)の松明の炎とは対照に、みか星様と従者ヒコの目の前には小さな焚き木しかございませんでした。
「ヒコ。わしの本名を読めば、わしが天津族の一族とは皆知ってもおろう?」
「・・・・はい。禁句となっておりましたが存じ上げておりました。」
「わしはの・・・・憎かったのじゃ。わしには父母はおらぬと申したが、とうの昔に捨ててしもうた。過去を捨て、未来も捨てた訳じゃの。・・・同族である天津神一族を恨み、その血が流れるわし自身を恨んだ。その血を早く星に戻したいと、常に前に走り我が身を死地へと夢中で走っておったが・・・・いつの間にやらわしを慕う者が共に武器をとり、気づけば軍が出来上がり、己自身は生き恥をさらし・・・・・・この有り様じゃの。」
「みか星様の強さは、どの族も敵いませぬ。」
「しかしの、ヒコよ。天津族とは生まれながらに天津族なのじゃ。弱き者を虐げ、いくら平和の為と申しても罪なき者まで刃にかけ、今もって戦争は治まらぬ。親・兄弟は殺し合い、それに従う神々は互いに対立し罵りあい、いずれ民は命を落とす。」
「恐れながら、みか星様。ならば、天津族であるあなた様が、和をもってこの国をお治めになるべき御方なのでは?」
「わしも昔は純粋にそう思った若さがあったがの。強い神とは、いくらその立場が強くあっても、己が安全な立場におればそのありがたみを忘れ、満足を知らず他の神と比べ、あれが足りぬ・これが欲しいと内心に我ごとを膨らませ、いざ目の前におる時はニコニコと会話し愛想笑いを浮かべての。また一人になれば、先の事まで想いやり・・・・心を乱しては世を恨み、他を恨み、天を恨む。それが出来ぬ者は己を恨む。」
「でもみか星様は違いますっ!!現に今こうしてる時も私たち弱い国津神の立場を考えて下さっている・・・・・・・」
「それは違うぞ、ヒコ・・・・・まぁ良い。話を聞け。弱い神は弱い神での。機会があれば己が強くなりたいと願う。それが出来ぬやさしき神は、欲があれば己に非があると思いこみ、また強き神に従いて・・・・・どこかで溜息をついて・・・・・お前にも一度や二度は、経験があるじゃろう。」
「そんな神ばかりではございませぬ。それだとどの神も同じではないのですか?」
「まぁ慌てるな。生きるとは、”考える” ということでの。まだヒコには早いかも知れぬが、”考える”のもさまざまにある。素直でない者・・・・・己に対してさえ己が胸を開けぬ者、己に目を背ける者は常に内に内にと自問自答を繰り返す。そして外に出す己は偽りじゃの。それは強いも弱いも同じ事。」
「・・・・難しいです、、、、私も常日頃考えて生きている人間です。」
「はははっ、そうじゃの。しかし、お前は幾ら考えても先に ”行動” を起こすであろう?今の己が真の己かどうかを”考える” 前にまずは行動を起こす。違うかの?」
「・・・はい。言ってはいけない事を良く口走ります・・・・・。」
「それで良きこと。傷つく事を恐れる者は常に思考の迷路に迷い込むものじゃ。」
「ですが、みか星様。・・・・・解りませぬ。・・・・強い神と弱い神。考える神と行動に移す神。傷つくことを恐れる神と恐れぬ神。・・・・・・この神々とみか星様の想いと、どう関係があるのでしょうか?」
「ヒコよ、そう焦るでない。よいかの、わしは強いも弱いも、考えるも考えぬも、恐れるも恐れぬも何も良い事・悪い事じゃと言うておる訳ではない。人には”欲”があり、これがないと生きてはいけぬ。また親があれば子があり、親は子を想い、子は親を想う。互いの健康や行く末、貧富から一族の繁栄、個々の充実感に満足感・・・・大きな意味で”幸せ”を考えるのも至極当然の事じゃの。また己だけの健康や向上心だけを考える者は、それはそれで良い。”欲” も見方を変えれば ”希望” と申しても良いしの。」
「・・・・・・はい。」
続く。
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コメント:6
- 己亥 ママ 10-12-02 (木) 22:38
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胸が切なく痛くなり、泣けてしまいました…
- kabosu 10-12-02 (木) 22:39
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管理人様
言われんとする事を心開いて受け止めます。 - 光龍 10-12-03 (金) 10:34
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おぉぉっ!!
これは、人の在り方について、とってもとっても大事なお話しですね。
私としては、とてもありがたい内容です。 - むらぽん 10-12-03 (金) 16:27
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管理人さん、お久しブリンコでございます♪寒いですね~
今日の日記… しみじみと読みました。そしてプリントアウト! 寒空を見上げ、神様~頑張ります!って言っちゃいましたよ。ありがとうございます♪ - 高野山学侶 10-12-03 (金) 22:00
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管理人さま
僕は今周りの人をみていると僕は置いてきぼりにされているなと感じます。来年成人ですがその前に新しい自分の時代へと切り開き文明開化じゃないですが自分を開花させて富我強兵のスローガンをかかげ追い付け追い越せで自分がどうあるべきかを定めて歩んで行く最中で
よきをとり あしきを捨てて 外国に 劣らぬ国と なるよしもがな
という明治天皇がつくられた歌に出会いましたが
人生も捨てるところは捨てて新しいことをとりいれていくのも人としていいのではないでしょうか? - 管理人 10-12-11 (土) 16:29
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己亥 ママさん
去る人は必ず何かを残して行きます。去る神も・・・・・。
kabosuさん
まぁまぁ、物語ですからお気楽にお楽しみ下さいね。
光龍さん
これを出来てない人間が書かせて頂くのは失礼にはなりますが・・・・楽しみながら書いちゃってます!
むらぽんさん
どもども。空を見上げればそこには神様。下を向いても土にも神様。あ、、、、何か見守られてますね(笑)
高野山学侶さん
人として素晴らしい事だと思いますよ。まぁまぁ、まだ未成年の方であればあまり頭でっかちになり過ぎない様にしておいて下さいね(笑)若さとは思いっきりやれる特権です。
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