海を越えた大王のお話　⑤

続く。

「母上様、わたくしは最後に入った養子ですが母上様のお気持ちは良く解ります。わたしを人質として差し出して下さいませんか。父上には申し訳ございませんがそれで一人でも民の命が救えれば本望でございます。」

「おぉ、あなたは天冬布（あめのふゆぎぬ）と刺国若（さしくにわか）姫の間に生まれて養子になった、後の大国主神（おおくにぬしのかみ）。別名、大穴牟遅神・大穴持命（おおあなもち）・大汝命（おほなむち）・大名持神（おおなもち）・八千矛神（やちほこ）・葦原醜男・葦原色許男神・大物主神（おおものぬし）・大國魂大神（おほくにたま）・顕国玉神・宇都志国玉神（うつしくにたま）・国作大己貴命（くにつくりおほなむち）・伊和大神（いわおほかみ）・所造天下大神（あめのしたつくらししおほかみ）・幽冥主宰大神（かくりごとしろしめすおおかみ）の神ですね？」

「すみません。名前は後の人が勝手に付けたあだ名みたいなものなんで、毎回、すべての通り名で呼ぶのを止めて貰ってもいいですか？そもそも昔はそんな長い名前や発音があった筈もないですし・・・・・・・・・・」

「わかったわ。略して大己貴神。わたしと一緒についてきなさい。」

当時は故郷の大陸の風習で、末子相続（一番下の子が後を継ぐ）の名残が強かったと思います。でないと、武力で勝るスサノオ軍が納得する筈ないし、いくら和睦とはいえイザナミ様を許したとは思えません。

一方、その頃のイザナギ様は・・・・・・・・・



「我も大国の長。一戦も本気で交えず、ましてや戦い抜かずに負けを認めれば後の世に名を汚す事になる。思い起こせば、イザナミと力を合わせ新しい大国を夢見、将来を語り合った昔が懐かしい・・・・・あの時の若い二人・・・・初々しい青春・・・・あの頃は楽しかった・・・・・・・・。夫婦とは最後はこうなってしまう宿命なのか、、、、何を間違え、何が悪かったのか。・・・・しかし・・・・・・しかし、今は涙を見せる時ではない。寡兵ともなってしもうたがこれこそ武人の誉れ！男は最後まで己の本心を曝け出すを恥とする。最後まで戦い抜くぞ！わしに付いてくる者は明日の命はないと思え！」

その後、イザナギ様は連れ従う息子達とついてくる軍をたずさえて、連戦連敗の中、今で呼ばれる四国にまで逃げます。

最後は戦いの中、淡路島、沼島で命を落としたのか島流しにあったのか・・・・・それは定かではありません。しかし、今でも残る 「伊弉諾・伊邪那岐（いざなぎ）」 という尊いお名前。現在でも記紀の中に御親の神とされ、たくさんの国を従え平定し、新しい国・新しい神を次々と世に残した功績は消えるものではありません。この神なくして今の日の本は考えられなかったでしょう。

時は多少戻りますが、スサノオ軍の本拠地出雲では・・・・・

「スサノオ様っ！！我々の勝利ですっ！先程、相方のイザナミが一番下の息子を連れて投降して参りました！これで軍が二つに割れたイザナギ軍は我が軍に勝てる見込みは万に一つもございません！！」

「うむ。そうか・・・・ここでついに伝説の部族も消えるのか。儚くもあるが盛者必衰、これも仕方なき世のならいごとじゃの。御二方の神と、従って降伏してきた軍を手厚く向かい入れ、決して粗末には扱うなよ。・・・・・・おぉ、そうじゃ、わしの末子の娘に須勢理姫がおったの。この娘婿に迎え入れ、後の大国を継いで貰おうことにしよう！」

「はっ、かしこまりぃ～」

気分を良くしたスサノオ様はイザナミ様、大己貴様の宴会も兼ねて隠居を考えて娘の須勢理姫と政略結婚させるプランまでブチ上げました。もしかしたら、「大己貴様を継ぎの継承者にする」これが和睦の条件だったのかも？？そして遂にスサノオ様、大己貴様が対面の儀を迎えます・・・・・それがスサノオ様にとって新たな問題の種だったのです・・・・・・・・・。

「・・・・は、、、は、、、、はじめましてぇ・・・・。父にイザナギ・母にイザナミを持つ日向相続権を持っている大己貴の命・・・・・と申します。え～っと・・・・突然ながら大変失礼な質問ですが、ここはネット環境は大丈夫ですか？光とか入っています？スサノオの大神様はＡＫＢだったら誰のファンですか？ブログはどこを巡回してます？iTunesはもうインストールされましたか？僕はお酒はたしなむ程度で、付き合いの酒とか苦手なんですがよろしければ誕生日だけは教えて下さいね。理由は・・・・・秘密です（照）家事と洗濯は割と得意な方なので任せて下さい。あと、自分で言うのもおこがましいのですが節約は上手な方だと思いますので出来れば経理なんかをやらせて頂けると・・・・・戦は体力もないし、肌が傷ついちゃうんでＮＧです。」

そこに居たのは、色白でオシャレで、それでいて自分を主張しすぎないこざっぱりとしたシャツを着こなし、適度に世の中に順応する能力に長けてはいるけど自分のライフスタイルをこよなく愛し、欲は人並みにあっても手に入れる努力をするよりは自然の流れに任せた方が良いと考え、ドロドロとした浮世を嫌うフリして男社会の生存競争から目をつぶりつつ、当たり障りのないポジションを模索しつつ、それを「自分らしさ」という言葉にすり替えて生きている後の大国主様の姿が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってか、その場に居た全員を裏切るほどの凄まじい草食オーラを出した、今でいう純度２００％の「草食系男子」だったんです・・・・・・・

「お、おう。そなたが大己貴か。よう参られたの・・・（うゎ～正直、微妙・・・・）」　
by スサノオ様

続く。

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