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神様物語① 小柄な老人

  • 2020-01-19 (日) 19:38
  • 神様

時刻は夕暮れに差し掛かった頃。

いつもの駅で降り、いつもの帰宅までの道のりをトボトボと歩いて帰るスーツ姿の青年がいました。

「はぁ、、、、」

大きくため息をつくその姿、年齢は20代後半でしょうか。帰りの電車で最後の体力を使い切ったのか全身から覇気は感じられず、瞳と眉には憂いを漂わせてはおりますが、高価でセンスのよい鞄に、磨かれた革靴。

繊細な中にもどこか身なりと品のよい青年です。



「あ~ぁ、、、またいつもと同じ一日が過ぎてしまった。ひょっとして我慢の時なのかな・・・それにしても、焦ってしまうなぁ・・・・」


1人ブツブツと呟きながらいつもの住宅街に入り、目指すは結婚と同時に、嫁の親から買って貰った新築の家。

この青年の前の職業では決してローンも組めなかった豪華なマイホームを、娘の為にと半ば強引に決めてくれたのは社会的に地位も名誉も手に入れた義父でした。

結婚を機に、嫁さんの親が経営する会社に入り、次の代として期待と羨望の中、3年ほどは高揚感と希望に満ち溢れていた青年も・・・・・

今ではすっかりプレッシャーと周りからの嫉妬の中、人間関係に疲れ果て、重たい足取で家を出て、さらに重たい足取で家に辿り着く日々。



「あ~、別に逆玉の輿を狙った訳ではないんだけどな、、、そもそも、今の仕事内容は自分には向いていないかも・・・・ただ一生懸命に生きてきただけなのになぁ・・・・いや、これを考えるだけでも神様からのバチが当たりそうだ。」

親に頼んで大学院まで行かせて貰い我武者羅に研究に没頭し、家と大学院の往復の毎日でしたが振り返れば充実感のあった日々。

出逢った頃のお嫁さんも同じ研究室にいた後輩で、晴れやかで社交的な中にも父親譲りか意地を張れば一歩も退かない情熱と強引さを持った利発で優秀な女性。

時折みせる幼げさに気づかぬうちに魅かれ、気づけばお付き合い、流れるまま結婚でした。


ふと、地面から目をあげた時、目に映ったのは住み慣れない新興住宅地の中にポツンとある、これもどこか浮いたような真新しいコンクリートで出来た神社の鳥居。


「結婚したての時は良く2人で買い物帰りに立ち寄った神社だけど。久々におみくじでもひいてみようかな・・・・今夜、嫁さんは確か、大学院の同級生と夕食に行くと言って出掛けたっけ。」


帰っていつもと同じ疲れた顔をみせずに済む、小さなストレスから解放された青年は、何気なく鳥居をくぐり、そう広くはない境内が目に入った瞬間、、、、、

・・・・違和感を感じます。


「・・・あれ?あれは・・・人じゃないか?人が倒れている?!」


これもコンクリートで固められた、まだ新しい本殿にこれも真新しい賽銭箱。

その賽銭箱に続く短い参道から少し離れた場所に・・・・

目を凝らしてみると、どうやら着物を来た小さなご老人が手を広げ、地面に倒れています。

一瞬、躊躇したものの、違和感より心配が勝った青年はまっすぐにその老人の元へ近づきました。

「・・・ちょっと、大丈夫ですか?大丈夫ですか、具合でも悪いんですか??・・・風邪ひきますよ、救急車呼びましょうか・・・・??」


数秒たったでしょうか。

その小柄な老人はゆっくりと目を開き、すくっと立ち上がり青年を見つめます。

立ち上がっても老人はより小柄に感じられるほど背が低く、華奢な印象でしたが目はいたずら小僧のように笑みを称えながら青年を見上げ、姿に似合わない闊達な声で言いました。


「はははは。救急車とは医者のところに連れていく車か。わしに医者はいらんぞ。丁度、今、”土の声” を聴いておったところじゃ。驚かしてすまんの、はははは。」


「つ、”土の声”、、、、ですか・・・・」


青年は声を掛けてしまったことに一瞬、後悔しましたがその温厚な老人の笑顔についつい引き込まれ、おみくじなんてすでに飛んでしまい、その場を立ち去る事も忘れて思わず質問を口にします。


「その、、、”土の声”っておっしゃるのは、一体どういう事なのでしょう・・・?」

老人から笑みが消え、少し考え込んでいる様子です。

「・・・ん?言ってもお前さんには解らんじゃろうから。さて、それよりこの時間に1人で神社に参るとは、何か理由がありそうじゃが?」

「えっ?・・・あぁ、いつもは通りすぎるだけの神社で最近はご無沙汰しておりましたので、ちょっとご挨拶に・・・・」


神社はどこか不思議な場所との認識がありつつ、自分でも要領の得ぬ答えに青年自身、心が浮いてましたが老人の質問が青年を現実に戻します。

実際にそう大きな理由もなく鳥居をくぐった青年でしたが、昨日までのこと。今日のこと。そして明日からのことを考えると、また心が重たくなる自分を感じました。


それを察知したのか、先に老人がを開きました。

「まぁ、良い良い。若い時は誰しも悩みは付きものじゃ。要らぬことを聞いて悪かったが、わしも少々、お節介が過ぎてしもうての。・・・・・遠い遠い、昔の知り合いに、お前さんがよう似ておっての、はははは。」


「・・・えっ?・・知り合い・・・ですか・・・?」


「うんうん、よう似とる。環境も立場も、時代も違うがお前さんとそっくりじゃ。そう言えば、なんだか顔まで似てきた様じゃの、ははははは。」


一段と大きな声で笑うと、老人はキョロキョロと周りを見渡し、丁度賽銭箱の上に挙げられた参拝者からの奉納であろう、一合瓶2本に手を伸ばすと、黙って一本を青年に差しだし、もう一本の蓋を空け、グビリと一口喉に流す。


「ちょ、ちょっと、それは・・・・」

「まぁ、良い良い。わしはこう見えてもそこそこ顔が知れておる。どこぞの神が祀られておるか知らんが留守じゃったゆえ、ちょっと拝借しようかの。話は長くなるゆえ、酒が入らねばのぉ。お前さんもそう思わんか?」

「・・・は、はぁ・・・・。」


小柄な老人の、声と心の豊かさに青年も促されるまま、賽銭箱から本殿に上がる小さな階段に腰を降ろす。

根が真面目な青年には多少の抵抗感があったものの、老人の声に素直に従う自分と、老人の自由奔放さには心地良ささえ感じました。


「話したくないことは話す必要はないの。・・・では、わしが話す昔話を少し聞いてくれんか。さて、どこから話そうかの、ははははは。」


1合瓶を両手で大切そうに握った老人は、日が暮れて静かに色が変わる空を見つめながら、ゆっくりと話はじめました。


つづく。


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コメント:1

20-01-20 (月) 7:25

新年一発目のお話は、大己貴様ですか?
ご老体は、山田の神様か塩の神様か?
こんなシチュエーションが本当にあったらなと思います。
夕暮れどきの人があまり居ない神社はとても落ち着きますからね…。
続きが楽しみです

コメント
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