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自然から愛された神。五十猛様のお話①

「うむ、まだ雨は降らぬか。これならまだ先に進んでも野宿できそうじゃの。」

「はっ。それならば今日はかなり東まで進めそうです。」

西に傾きかけた太陽をまぶしそうに眺めながら、精悍な顔で空をみあげる立派な体躯をもった神、、、、、五十猛の神。この神の目をみれば穏やかで深く、一見物静かな雰囲気ですが・・・・・強さを秘めたやさしさと、生きる上での信念が黙っていても染みだして相手の心に伝わってくるような神様でした。

なによりも、この神様の名前をあらわす「五十猛」 とは 『50の功績をもった男』 として他国の神々にもその勇ましさと名前は知れ渡り、一度手に武器をもてば強力な軍隊の長となり相手の軍隊を蹴散らす、、、、当時は武神として恐れられていたスサノオ様の実子であります。



・・・・・しかし、それももう一昔の話。

今は父神であるスサノオ様の功績もあり、近隣の敵国・・・・・当時は数百・数千人の規模だとは思いますが、一通りは平定され今では土着の民族の小さな反乱ぐらいはあったものの、平和といっても良い時代です。


「よし、皆の者。荷物を集めてあと一踏ん張りじゃ。日が暮れる前にもう一つ山を越えるぞ。」


五十猛の神は一歩一歩、自然に満ちた大地を踏み歩く。

見渡す限りの風景はそのほとんどが緑におおわれ、それぞれの存在を主張し、西日に照らされはじめた木々はしげり、またたくさんの種類の実をみのらせ風は少々乱暴には吹いておりましたが遠くにキラキラと光りを反射する川は流れ、足元に目をやれば野ねずみや野ウサギ、イノシシの足跡・・・・・・さらには地を這うクモに蟻、ありとあらゆるものがその生を純粋にまっとうしようと生きておりました。


「五十猛様、ご報告いたします。南の平地にてまつろわぬ者ども(いう事を聞かない者たち)が暴れまわっているとの話が、、、、その数、およそ50名あまりと。」


「そうか。ぬしは100の兵を連れて大人しくさせてこい。・・・・・よいか、なるべく殺さぬようにするのじゃ。」

「はっ、、、、しかし、南の者らはすでに幾たびも我が地を荒らし・・・・・・」

「よい。なるべく兵を減らさぬように。まつろわぬ者らも殺さぬように大人しくさせろ。」

「はっ!」


五十猛の神の祖父が命をかけてこの国にやってきた頃、それは ”生きるための戦い” だったに違いありません。戦いによってようやく生を保て、多くの同胞の民族を犠牲にしながら、時には降伏を受け入れてやり同胞に加え、時には土着の民族と糾合し、今では一つの大きな ”力” として徐々に数を増やしてきました。

生きるための安心が得られれば、次はそれを”守る”ため。

”守る” には少しでも多くの土地を支配していき、木の実や貝、狩れる獲物、そして祖国よりもってきた異種の種をいろいろな地で試し、「安定した供給ができる食べ物」 を一族の皆に分け与えていくということ・・・・・


(同じ戦にしても、もう昔と今は違う。若かりし頃は、”生きる” ということが ”戦” というものであった。仲間が血を流し、命が命を奪い合いこれをまた繰り返す人生、、、、”人間” というもの。わしらは一体、何のために生まれ何のために死んでいくのか・・・・・・・)


隣国の勢力争いの中、他の神々がその豊かさに浸り、生に溺れていた頃、、、、、この神様はそれより先の先にある、「命」「生きる」「本当の豊かさ」を常に考えていた、当時としては傍目からみれば変わった神様でした。


つづく。

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コメント:4

14-11-16 (日) 18:29

五十猛大神様のイメージは“家族の長”つまり“父親”と言う言葉がぴったりの方だと常々思います。スサノオ大神様は“王の中の王”と言う感じで、失礼だと思いますが、何故か畏れ多くて近寄り難い感じがします(別にスサノオ大神様が優しくないとか、そんな悪い意味じゃないです)。五十猛大神様は何故か御父さんの様に静かに家族を見守っていて、近くて遠い、戦前の父親像の様な方だと勝手に想像してます。

私もそんな方に爪の先でも近づければなと考えていますが…、本当に理想の方です。何はともあれ、私の一番大好きな神様です。

もっち 14-11-21 (金) 0:54

こんばんは。村雲さん。
おひさしぶりです。
もっちです。
神様紹介はいつもいつも楽しみにしています。

今度大阪鑑定をされるのですね。
メールさせていただきましたので、ご確認くださいね♪

管理人 14-11-24 (月) 19:05

尭さん
ほんと五十猛様は自分も憧れの理想像です!!!神様のお話でいつか書かせていただきたいと思っていたのですが、なかなか進まなくてですね・・・・・お楽しみに(笑)

もっちさん
良かった、、、、あれ~メールきてないよ?って確認したら、なぜか迷惑メールの中に入っておりました(汗)折り返しのメールは今しばらくお待ちくださいませ。

田舎農夫 14-12-20 (土) 17:37

こんばんは。村雲さん。五十猛様と言えば、当県で祀られている伊太祈曽神社を思い出しました。一昨年よく参拝させて頂きました。確か五十猛様の竒魂も祀られていたような記憶があります。すいません近頃すっかりご無沙汰しておりました。ですが、改めて、村雲さんのお話を読ませて頂き、なんか親近感がわいてきてます。ありがとうございます。

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