- 2013-03-21 (木) 0:27
- 神様
つづき。
「女王、この度は珍しいものを持ってまいりました!金銀がちりばめてある美しい鏡でございます!」
「女王、誠に珍味の品が手に入りました。どうぞお召し上がり下さい!」
「これは千年に一度しか捕獲できない、龍の鱗で作った髪飾りでございます、どうぞお納めを・・・・・」
女王を中心にして瞬く間に出来上がった泥の集団は・・・・・これも同じく、泥で作られた宝石や宝物を女王に貢ぎはじめます。・・・・・・・すべては我欲を満たすために。
「だれか、、、誰かもっとわたしの喜ぶものを貢がぬか!もっと美しくもっと珍しいものを!!こんなモノでわたしの心は満たされぬ!早く次を持ってこぬか!」
多くの品々、珍しいもの美しいものをみては、はじめはびっくりしたり喜んだりしていた女王でしたが悲しい事にこれにも段々と慣れていき、欲は欲を呼びその要求はエスカレートするばかりでした。
その姿が幾年と続いた頃でしょうか・・・・・
その姿をまた違う界から眺めていた姫神がお一人。
それは龍宮界にいらっしゃいました豊玉姫の神でした。
「なんと哀れな姿、、、、なんと哀れな界でしょう・・・・・。一生、何も満たされぬまま己らの我欲によってただ満たしたい、与えて貰いたいと願う者々の界。すべては幻、すべては思い違いよりはじまりましたこの界は虚しさを増すだけでしょう・・・・・・・」
隣にいたお付の眷属はこう答えました。
「姫神様、お言葉ではございますが。今ではこの界が無ければ、天界や神界はおろか全ての界はバランスを失い破滅の道を歩みます。この界はすべての界が界として成り立つ上で無くてはならない界なのですよ」
「それは十分、承知しております。しかし、、、、なんでしょう、この胸を突く侘しさは。これが本当に私たちが求め、天乃益人らが求めてた世界の成りの果てなのでしょうか・・・・・・・・人の欲とは限りない。あの者たち・・・・・・・いえ、者とも呼べない存在はああやって永久にそれぞれの欲だけを満たす為に存在する。あの者たちが気づくのはいつの時ごろでしょう・・・・・・・・本当に大切なもの、心の底から求めているもの、満足できるものの存在を・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・。」
その時です。
悲しさと憐れみを宿した龍宮界の豊玉姫様の目から一滴の涙、、、、、情が零れ落ちました。
その一滴の涙は底の底の界に落ちていきまして、しばらく落ちていく内にそれは一つの ”石” となって、暗闇の世界にぼんやりと、しかしあたたかく輝く宝石となって魔界へ落ちていくのでした。
「やややっ、天より誠に珍しい宝石が落ちてきたぞっ!!これを手にいれ、あの女王に差し上げればようやく己の欲が満たされるに違いないっ!!なんとしても手に入れねばっ!!!」
天から落ちてくる一滴の石。それは何ともいえぬ海のやさしい香りに包まれ、暗い暗い世界へと静かに落ちていきました。そして魔界では、この石を我欲のために手に入れようと多くの泥の人形が取り合い、あるものは他の人形を打ちこわし、あるものはこれも泥で作った武器で相手を攻撃し、激しい争奪が繰り広げられました。その内、泥でできた人形たちはそれぞれの想いが形となり、奇怪な姿に変わり果てていたのを誰一人気づかずに・・・・・・・・・・・・・
その争いの中で、一滴の石はさらに泥の為に細かく砕かれ、最後に手に入れた人形が掴んだ時には、さらに小さく小さく光る粒となっていたのです。
「・・・・よし、これでようやくオレの欲が満たされるっ、これを女王に献上さえすればオレの心は満たされるのだっ!!!」
その泥の人形は急いで女王の元へ駆けつけます。手にはしっかりと小さな小さな粒となった海の香りのする光の石をにぎりしめて・・・・・・・・・・・・・
「騒がしい、何事だっ!そんな醜い争いより、今度こそ私の心を満たし、癒してくれる品は持ってきたのかっ?!」
「はい、女王様っ!!今回はまたさらに珍しい品をお持ちいたしました!どうやらこの界のものではなさそうな、誠に珍しきお品物でございます!!!」
(・・・・ん?この香りははじめて匂う香りだ・・・・・・・・・・・・)
「よし、見せてみれ。私に寄こしなさい!」
はじめこそ神々のたった一つの忠告を忘れずにいた魔界の女王でしたが、いつの頃からかその言葉を忘れていたのです・・・・・・・・・・・・
つづく。
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