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魔法の杖を持った神の話⑤

  • 2012-03-04 (日) 19:45
  • 神様

つづき。

「ど、どうしたと言うのじゃすずの御魂・・・・・・・・」

皆、神々は静かにすずの方へ一斉に目を向ける。すずは臆する事なく、真剣なまなざしは勾玉の大神から離すことなく、こう言いました。

「・・・もしも・・・・・願いが叶う事ならば、どうしてももう一度、あの父様母様の子としてすずは生まれ変わりとうございます!!」

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「あくる日もあくる日も、私は毎日あの父様母様を眺め見ては、”私はここにいる。父様も母様も頑張って欲しい” と願いを込めながら、私もこの世での修行の心の支えにして参りました・・・・・・でも、父も母もついぞ笑顔が戻らず会話は多少増えても笑顔が戻らない・・・・・・なんとかして、なんとかして、私はあの父様母様を選んでここに来たんだと伝えたい・・・・・・もう一度、会って笑って話がしたい・・・・・・・・お願いです神々様!!なんとか私を、またあの両親の元に!」

その御魂の切実な叫び声に、場は水を打ったように静まり返る。そして、中央に座った神はさらにその顔にやさしさを浮かべてこう言いました。

「・・・・すずと呼ばれた御魂よ。お主の申す事はようわかる。が、お主ほど賢い御魂ならもうわかっておるとは思うがの。前の世での両親の名が、ここのリストに挙がっていない以上は、お主はまたあの世で修行をいたすに同じ親元に生まれ変わる事は出来ぬ・・・・・・残念じゃが、それがこの世のルールとなっておる・・・・・・・。」

すずと呼ばれた御魂は下くちびるを強くかみしめ、ポロポロと涙を流しながら、何度も何度も叫びたくなる心を押さえるのに必死でした。すずの魂の純粋さとやさしさが手にとるようにわかるその他の神々も、すずの心が落ち着くまで静かに見守り、ただただ黙っております。

「やれやれ、困ったものじゃの・・・・・・・時間と共に制限の多くなる肉体を持つとはの、主も知っての通りこの世からすればあの世での修行。稀に同じ場所に生まれ変わることもあるが、魂そのものは遊びに行く訳でもなく情を満たす為に行く訳でもない。情や喜び、悲しみや悔しさを通して己の魂を磨くため、育てるためじゃの。お主の御魂はお前の役目をきちんと果たし、その上輝いておったがゆえに今こうしてわしらが次の行く先を決めておるが、それぞれの魂は生前いかに魂を磨けたのか、育てられたかのか、肉体を無くせばその魂に見合った場所で見合った者が定めてもおる。次は主の両親の番。残された父母となっておったものが、いかに魂を磨けるかは本人者たちに任せねばなるまい。そうわしらを困らせるでない・・・・・・。困ったの、、、、、何か良い知恵はないかの・・・・・・・・・・・・・・・・・のう、天ノ香々背男(あめのかかせお)殿?」

天ノ香々背男」と呼ばれた神に、今度は他の神々の目が一斉に向く。

しかし、香々背男と呼ばれた神は・・・・・・そんな呼び掛けはどこ吹く風か、相変わらず末席にちょこんと座り、ボーッと一点を眺めているのか、見ていないのか・・・・・・その厚いまぶたからは想像が出来ない。

「これ香々背男殿、香々背男殿、、、、なんじゃ、寝ておるのか??」

隣にいた菅原道真様がそっとささやく・・・・・・・・

「大神、あそこに座られておられます神は天ノ香々背男様の和魂になられます、”味鋤高彦根神(あじすきたかひこね)” の神でございます・・・・・天ノ香々背男様は”荒魂”となって、地上にて生まれ変わり天津甕星(あまつみかぼし)と呼ばれ長い間封をされたまま、その御魂を磨いておられます最中では・・・・・・・。」

「おお、そうか。失礼した。では、味鋤高彦根神の神よ、何か良い知恵はないか?」

名を呼ばれた神は、今初めて呼ばれたかのように勾玉を首から下げた神に目を向ける。そして、ゆっくりと大きく一つ、うなずきました。

「・・・・なるほど、なるほど・・・・・・そうであったか、その方法があったか。・・・・・・よいかの、すずと呼ばれていた御魂よ。お主が少し待てるのであれば、、、、待つと申しても、こちらの時に換ればしばしの事じゃ、、、、、今は肉体を持って修行されておる主の父母だった者もいずれ肉体を失う。これから先は期待するしかなかろうが、あの二人の魂がこの世に戻ってくるまでの肉体を持った残りの時間、しっかりと魂を磨かれれば、また産土神と縁深く持ちくれれば・・・ここに居る菅公殿がいずれ父母の魂を導くことになるやも知れぬ。・・・・・その時にの、ここに居る菅原道真の神に頼んでおいて親子にはなれぬでも、兄弟・姉妹・もしくは縁深き者として同じ時代に生まれ変わらせる事は出来よう。」

「・・・・は、はいっ!!ほんとうですかっ!!!約束でございますっ!ありがとうございますっ!!神様!多くの神々様もありがとう、道真様よろしくお願いいたします!!本当に、本当にありがとうございますっ!!」

「はははっ、、、、これこれ、すずと呼ばれた御魂よ、言うてはおくが約束は出来ぬぞ。あの、主の両親だったものが、残された時間でしっかり磨いてこの場に戻ってくることが出来れば、、、、の話じゃからの。」

「はい、私は信じております!きっと・・・・きっと父様も母様も、この場所に戻ってきてくれる事を、私は信じております!!母は我慢強く、反対に固執する心がありますが。父は頑固で自分の思う通りにしか生きない方ではございますが、私の事だけは覚えてくれております・・・・・きっと、、、、きっと、、、、、かならずここに参られます!」

「うむ。わしらもそう願おておるぞ。さて、ご苦労じゃったの、これで終わりじゃ・・・・・・・・解散!」

立ちすくんだ男は・・・・・・・・・・・・天を仰ぎみた。

成長したすずの声が、ただひたすらに懐かしかったこと。一度でいいからその声を聞きたいと、心がよじれるぐらいに切望する毎日だったが、今はさらに多くの希望と不思議な安堵感。同時に、言葉には言いつくせない神々への感謝と、今よりの覚悟。まだチャンスは残っている・・・・・・自分が肉体を持って、生きている間は・・・・・・・そして、肉体を持っている間しかチャンスはない・・・・・・・・・・


どっと溢れる、多くの心を揺るがす気持ちが同時に男の胸を襲った時に、男はそのまま意識を失ってしまいました。

フト気づけば、崖の横に横たわり目の前にはさきほどお供えしたであろう、野の花の不器用な花束と、かかあと黙々と作った小さな団子の山。

男はゆっくりと立ちあがり、丁寧に手のひらにもう一度、地面に置かれた団子を包むようにすくいとると、その足は自然とその先にある産土様の鳥居へと向かって行ったのでした。

(やろう、、、どこまでやれるかは解らんが、それでもオレはやってみよう。この体が動く限り、いいや、体が動かなくなっても命さえあれば、まだまだオレはいける。あぁ、早くこの事をかかあにも知らせねば・・・・・いや先に産土にお礼を申し上げねば・・・・・・・・)

そこには来た時とは違って、燃えるような光を目の奥底に宿した男の顔がありました。

つづく。


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コメント:6

PAUL 12-03-04 (日) 21:58

味鋤高彦根神様って、若いイケメンのイメージがあったのですが、、、
続きが楽しみです(^_^)☆

naobon 12-03-04 (日) 23:45

村雲さん天才です~!演出家!!。・。゚(ノДi゚)。゚。・。やっぱお話っていいです~アンコール、アンコール ってまだ続くんですねヾ(*´∀`)ノ楽しみにしてますです。アップするのにすごく時間がかかりそうですねwww ありがとうございます☆ 大河ドラマになればいいのに“(`(エ)´)ノ彡☆(笑)

チルルヲ 12-03-05 (月) 0:04

こんばんは、管理人さん。
手鞠歌の謎とルーン文字の詳細を追跡中、下照姫様のにい様のお話と聞いて、現世へ戻ってきた(笑)チルルヲです。
一旦お知らせを挟んで、チャンネルはそのまま、的な斬新なブログ(笑)に驚嘆しながら、拝見させて頂きました。

話が本題と超逸れるかもしれません、ゴメンナサイ。
古事記に拠る所の下照姫様の兄様、という解釈はあっているんですかねぇ(謎)荒魂、和魂は別とした、現世の縁として、です。
その辺の素朴なギモンをブツケル器がないのが、最近の悩ましい所です。話の腰を折ってしまうようで、申し訳ありませんが・・・(悩)

そしてあっさりと本題に戻りつつ・・・、
杖をもった神様、どのお方なんでしょう(謎)
そして、『ニギハヤヒの謎』編には、一体いつ頃たどりつくのでしょうか(苦笑)
謎が謎を呼ぶ展開に、いろんな意味(笑)で目が離せません!!

続きは瞠目して・・・、お待ちしてマース(笑)

12-03-05 (月) 0:51

今晩は、村雲さん。

この話を読むと、自分も神々様のいらっしゃる場所に戻れるのかな?と心配ですが、頑張って生きようと思います。

あと、日本の神々様は本当に上下の関係が無く、みんな平等に各々の神様を尊重されているようですが、我々も(畏れ多いことですが)、何れは神々様の一員として役目を持つ事になるのでしょうか?それとも、神々様になる方の御霊は元々から決定してるのでしょうか?少し、知りたくなりました。

ふしみ 12-03-05 (月) 2:28

今晩は村雲さん。
お話をありがとうございます。

この世で果たすべき役割を果たしたすずと、
すずの居る神々の場所へ戻れるかも分からない両親。
この差が、私には恐ろしく思えます。

この世で生きている間にしかチャンスは無い、今頑張らねば生まれ変わる機会すら貰えない、そう言われた気がしますよ。

頑張るって、一体なんなんでしょうね。
あの一輪の花のように、誰を恨むでもなく見返りも求めずひたすら花を咲かせる努力を重ねて、あらゆるものに素直な感謝を捧げ、健気で等身大のありのままの可憐な美しい花を咲かせる事でしょうか。
それを現実の今の自分に置き換えて、じゃぁ具体的にこうしてみよう、と一歩を踏み出すだけでも違うのかな。

…誰をも恨まず素直な感謝と努力を重ねる、私に一番足りないものです。
やれやれこれは大変難儀な道ですよ(笑)

とにもかくにも、指針をありがとうございます。

さやか 12-03-06 (火) 13:59

読ませてもらってて、めっちゃ泣けました。

これから、このお父さんのように
命があるあいだ 、
力強く生きて行くぞって決めました。

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